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風呂上がりのこいつの髪は、針金のような光を持って冷たい。
女みたいな長さの髪だ。
ばふばふとタオルで乾かしているところを見ると余計にそう思う。
「眠てぇえ…」
ふわぁ、と大きく欠伸をして、涙の浮かんだ目をこする。昔から変わらない仕種と変わった容姿に、違和感を感じた。
「おい」
「…なんだぁあ゛」
「来い」
「髪くらい乾かさせろぉ」
「カスが」
「…あのなぁボスさんよぉ゛」
「いいから」
俺は、焦っているんだろうか。
おれの。
しらない。
は ち ね ん か ん に ?
「……っ、スクアーロ」
「どおしたぁ…?」
知らない。
知りたくもない。
あの時もこいつがいて、今もこいつがいる。
それで、いい、と、思う。
「う゛、ぉ」
「さっさとこい、カス」
熱に浮かされたような世界の中、握り締めた髪だけがいやに現実的な冷たさを保っていた。
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