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出かけようぜぇ、そう言って彼は僕を此処に連れて来た。
「…凄いね」
「だろぉ?」
辺り一面にシロツメクサの小さな花が咲き乱れている。
それにのびのびと成長した草。
ともすればそれに埋もれてしまうくらい小さな僕だけど、今はスクアーロが抱き上げてくれているからそのほとんどを視界におさめる事ができる。(まぁ実際はフードの所為で良好という訳にはいかなかったけど、)
隣りにはルッスーリア。
「それにしてもよくこんな所知ってたわね、スクアーロ」
「誰にも言うなよぉ」
「あら、いいじゃない皆で来れば」
「う゛お゛ぉぃ、此処が似合うと思うかぁ?あいつらに」
「…ベルには似合うんじゃない?」
「スクアーロには似合うよね。ベルも結構似合うと思うよ。でも…」
「レヴィとゴーラには似合わねぇだろおなぁ」
僕の言葉に続いてスクアーロが言った。
僕もそう思う。
…ボスはどうだろう。
さらさらと風が吹いて彼の長い銀灰色の髪を揺らす。
彼自身それを気に入っていて、丁寧に扱っているのを知っている。
仕事中からは想像もつかないくらい柔らかく細められた目。
そういえばボスもこんな目をしていたっけ。
―スクアーロの何処が好きなの?
僕がそう訊いたら、同じ目をして笑った。
普段見せない笑い方。
あぁ、此の人は彼の何処が好きって訳じゃないんだ、そんなことを感じさせる笑い方。
「ねぇスクアーロ、」
「…、なんだぁ?」
何か違う事を考えていたらしく、僕が話しかけると一瞬戸惑ったように瞼をぱちぱちさせてからこっちを見た。
その顔がなんだかおかしくて、少し笑うとむすりとした顔になる。
「なんて顔してんのよ、スクアーロ」
「そうだよ。此処が戦場だったら大変だよ?」
「…うっせぇよぉ゛。マーモンは何か言いたかったんじゃねぇのかぁ」
僕たちにからかわれて恥ずかしいのか、軽く頬の辺りを染めながら。
「スクアーロ、その顔で凄んでも怖くないわよ?」
「………」
「そう苛めないであげなよルッスーリア。ねぇ、スクアーロ、」
「…なんだぁ」
「ボスの何処が好きなの?」
そう訊くと。
さっきの比じゃないくらいに顔を赤くして。
顔が赤くなった事を自覚して、更に顔を赤くする。
耳までうっすらと赤い。
「スクアーロってば、顔真っ赤よ」
くすくすとルッスーリアが笑う。
「う゛、ぁ」
「あらあら」
「苺とか林檎みたい」
「…うっせぇぇ゛」
「全部好き、ですってマーモン」
「そうらしいね。ねぇルッスーリア」
「何かしら?」
「花冠って作れる?」
「うーん…多分できるわ。自信はないけど」
「じゃあ、教えて」
「いいわよ。一緒にやりましょ」
「作ってどうすんだぁ?」
「ボスにお土産。スクアーロもほら、」
「似合わねぇだろぉ…作り方なんてわかんねぇぞぉ」
「いいんだよ」
そう言いながらスクアーロを引っ張ってしゃがみ込む。
「じゃあやるわよ?先ず此れを―」
――――――――
「ただいま、ボス」
「帰ったぜぇ」
「あれ、何それ王子の真似?かわいーじゃんオレの分はない訳?」
「あるよ。どれがいい?」
「これこれ、一番キレーなやつ」
「ティアラがあったらつけられないんじゃない?」
「ししし、大丈夫だよだってオレ王子だもん」
「…あらそう」
ぽふん、とベルが頭にシロツメクサの冠を乗せる。
もともとあったティアラと合わせて少し不格好で、でも彼に妙に似合っている。
「う゛お゛ぉぃ、似合うぜぇベル」
「ししし、あたりまえじゃんだってオレ王子だぜ?冠は全部似合うの」
「安っぽい王子だなぁ」
「何それヤキモチ?似合いすぎる王子にヤキモチ妬いてんの鮫?」
「ボス、ボスにもあげるよ。はい此れ」
「…下手くそだな」
「仕方ねぇだろぉ゛始めてなんだからなぁ!」
スクアーロが作ったぶんをボスに差し出すと、彼はひょいとそれを取って頭に乗せた。
「…思ってたより似合うね、ボス」
「そうか?」
「…オリンピックみてぇだなぁ」
「黙れカス」
言いながら、目を合わせてシロツメクサの冠を乗せて笑う、ふたり。
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