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夢を見た。
あの子の夢だ。
「…………会いたい、」
思ったら行動あるのみ。
会いたいなら会いに行けばいい!
幸い今は交通手段が発達しているから、1日とかけずにあの子の処まで行ける。
「よっしゃ、行ったろ!」
ベッドのスプリングを軋ませて飛び起きる。
ああそうだ、せっかく会いに行くのだからお土産を持って行こうか。
それとも格好付けて上等な服でも着ていく?
どっちにしたってきっとあの子は始めに驚いてから、はにかんだような可愛らしい笑顔を向けてくれるんだろう。
そのあときっと優しい声で名前を呼んでくれるのだ。
すぺいんさん。なんて。
思い出すだけで顔が緩む。
「…スペインー…?」
「あ、なんやロマーノ、起こしてしもた?ごめんなー」
「んー…いいけどよ…どっか行くの、か?」
「ちょおな。日本のとこ行ってくるわ」
「…時差は?」
「あ。考えてへんかった…えーと今が大体昼すぎ?んでーフライトが10時間くらいやから…着くと夜中やん!もー!」
「…昼に出ればいーじゃねーか」
「あ、それもそやな」
「そんなことより腹減ったぞこんにゃろー」
「はいはい、ほな朝ご飯にしよか」
お土産どないしよ、問い掛けたら、目をこすりながらロマーノがパンを取りに歩いて、トマトでいいんじゃねぇの、なんて。
明らかに適当な答えを返してくる。
「ちょ、ロマーノ真面目に考えたって!」
「めんどい」
「つめたっ!そんな冷たい子に育てた覚えはないでロマーノ!」
「なんだよ…日本だったら何やっても取りあえず喜ぶんじゃねーの?」
「せやから悩むんやないか…どうせならほんまに喜んでくれるもんあげたいし」
「…ふぅん」
厚めに切ったパンをトースターに放り込みながら、ロマーノは良く分かっていなさそうな声を出した。
「そんなことがあったんですか」
その日の昼にとにかく日本まで行こうと飛行機に飛び乗って、いつもどおりに可愛い笑顔に迎えられて。
柔らかく陽の当たる縁側でゆったりと日本の淹れたお茶を飲みながら話をする。
「そやねん、ロマーノ冷たいやろ?」
「ふふ…でも、スペインさん」
「ん?」
「ロマーノくんの言うとおり、私、あなたが持ってきてくださるものならなんだって嬉しいですよ」
ふうわりとたおやかな笑顔をうかべた愛しい愛しい恋人は。
全くなんて可愛いんだろう。
「……ああもう日本大好きやー!!」
「おやおや、ありがとうございます」
「なぁ日本は?日本は俺のこと好きやって思ぉてくれとる?」
「あら…ええ、そうですね、とても。…好き、ですよ」
はにかむ顔は何にも変えがたい!
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