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ぱたぱたと走る音がする。
部屋の前まできて、音は止まった。
音の主は呼吸を整えているらしい。
普通ファミリーのやつらは此処には近付かないし、近付いて来るとしても嫌々来るために足取りは自然重いものになる。
此の足取りは軽く、自分からオレの部屋に来ようとしているんだろう。
オレの処に好んで来る奴はふたり程。
ひとりはさっきまで行動を共にしていたから違うだろう。
だから。
「よぉ」
がちゃり、扉を開けると中途半端な格好で止まったランボがいた。
ぱちぱちと瞬きをして間抜けな顔で立っている。
多分背が伸びたな、なんて考えているんだろう。
実際、ゆうに15cmは差がついてしまっている。
「…久し振り、リボーン」
「あぁ。…入れよ」
「ん。あ、さっきボンゴレに会ったよ。今日はもう帰ってもいいって」
「そうか」
ぱたん、と扉を閉めて、奴がじっとこちらを見る。
…畜生、上目遣いってやつが此処まで心を揺さぶるものだとは思わなかった。
ヤバいくらい可愛い。
ハグしたいキスしたい抱きたい。
「…今日、買い物して帰ろうよ」
「……」
「嫌そうな顔すんなもう!」
「何時も此の顔だ。悪かったな、アホ牛」
「アホ牛違うッ!」
きゃんきゃんと吠えて頬を膨らませる。
可愛い。
「…ランボ」
「だいたい…っ、な、に。リボーン」
「ただいま」
表情も変えずに言ってやれば、
一瞬きょとりと目を瞬かせて、
へにゃりと笑って、
「…おかえり」
あぁ、オレは此の一言を聞く為に帰って来たようなものだ。
呪われたオレに、こんなふうに。
気を許したような笑顔を向ける、こいつが。
愛しくて、愛しくて。
「さっさと帰るぞ」
「うん…買い物して行くから」
「…面倒臭ぇ」
「リボーンがいない間に料理のレパートリー増えたんだから食べろよ!」
「はいはい」
「適当な返事するな!」
こんなにも幸せで、いいのだろうか。
本当に。
幸せで。
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