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ギャギャギャギャッ、破裂音にも近い擦過音が家の前から聞こえる。
…ああ、朝がきた。
「おはよう菊!…先輩!」
「アルってば早いよ、また負けたー…あ、おはようございます本田先輩!」
「…おはようございます、おふたりとも」
門の前から笑顔も眩しく見上げて来る双子。
…見た目はいいんですよねまったく。
でも、でもですよ?
「我が家の前にタイヤのスリップ痕つけるのやめてくれませんか…」
「あはは…アルの跡すごいですよねー」
「なんだよマシューだって結構…ついてないな」
「僕これでも全力なんだけどなぁ…」
しょんぼりとした様子でマシューくんが肩を落とす。
…いえ、この場合は別にいいと思いますよ?
アルフレッドさんが規格外なだけですからね?
「ねぇ菊先輩、早く下りておいでよ!」
「はいはい、今行きます。まったく元気ですねぇ…」
とんとんとん、階段を下りて、ダイニングに座る兄に声を掛ける。
喧しい弟は部活の朝練ですでに登校済み。
「では兄さん、行ってきますね」
「好、行っておいで。それにしたってあの餓鬼どもは毎朝うるさいあるねぇ…」
「はは…じゃあ」
「落ちないよーにするあるよ!」
「はぁい」
鞄を持ち直して玄関の戸をくぐる。
今日もいい天気ですね。
「おはよう菊先輩!」
「おはようございますアルフレッドさん」
「おはようございます本田先輩!」
「おはようございますマシューくん」
二度目の挨拶はすでに習慣になっていて、少しおかしく感じるものの気にはなりません。
顔を合わせて挨拶をすることはいいことですしね。
さて。
「ほら、早く乗りなよ菊先輩」
「うっ…わかりましたよ、もう…」
「鞄持ちますね」
「ありがとうございます」
アルフレッドさんの自転車の後に乗って彼をがしりと掴む。
「行っくよー」
「おねがいですからゆっくり行ってくださ、わぁっ!」
「アルってばスタートダッシュが早いよ!」
「あわわわわ…」
ああ、朝からジェットコースター。
ものの十数分で学校まで到着できますよ。
体力は使わなくてすむんですけど気力を物凄く使うんですよねヒィィちょっと待ってアルフレッドさん曲がり角はスピード落として!
アルフレッドさん絶対いつか事故起こしますから!
子供とかお年寄りにぶつかったらあなた轢くでしょう間違いなく!
だから嫌なんですよアルフレッドさんの後ろに乗るの…マシューさんは楽だったなぁ…なんて。
ちょっと旅立っている間に学校に到着。
は…早いですねぇ…あはははは…
「はい本田先輩、鞄」
「ど…どうも…」
私今きっと顔色悪いです。
周りの生徒はすでに日常になっているので普通に挨拶してくるのですが。
…羨ましい。
「じゃあ本田先輩、またお昼に」
「今日は焼きそばパンの日だぞ!」
「…たまには自分のクラスでお食べになったらどうですか?」
「ヤだ」
「嫌ですよー」
あっ笑顔が眩しい。
無駄に見目がいいんですから…
「コーヒー牛乳買って行きますね」
「うう…はい…」
「じゃ、昼にね菊…先輩!」
「授業はちゃんと受けるんですよ!」
「「はーい!」」
まったく、
「ここだけ見ればいい後輩なんですけどね」
さて、昼にまた騒ぐことになるでしょうからそれまでは穏やかに過ごしますか。
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