・夜はいけない。
夜はいけない。
優しすぎるからいけない。
夜はいけない。
色々なものを考えるからいけない。
・今日の小噺!
設定お借りしました!⇒"
bramble"さま。ぱそこん向けでつ。
正直…無断です…orz
…言った方がいいのだろうけど、言うには俺はチキンハートすぐる(遠い目)追記、報告して来ました!ほぎゃああどきどきする!
※菊
人里離れてひっそりと暮らす鬼の子。
心優しく人間と仲良くしたいと思いながらも幼い頃に正体がばれ迫害された記憶により里に近付けずにいる。
仲間もほとんどいなくなり、ひとり、山奥で畑を作るなどして生活していたある日、覚えのない気配と血の匂いを感じ、様子を探りに行ったところアーサーと出会う。
※アーサー
中世ヨーロッパで悪名を馳せるも封印され長い間眠りについていたヴァンパイア。
さる研究機関により持ち出され、日本の山中にある研究所に極秘裏に持ち込まれる。
その夜、警備にあたっていた助手2人が好奇心から棺を開け、その際打ち付けてあった釘に手を引っ掛け1人が負傷。
血がアーサーの顔に落ちたことで覚醒。
2人から血を搾取し研究所より逃走。
※時代は昭和初期くらい。
※言葉が通じてる理由は考えちゃだめです。
+++++++++++++
「――…っ、は、あ」
ごぐりごぐり。
アーサーの喉が鳴る。
いつぶりの食事だろう――何十年か、それとも何百年か。
…あの時はアーサーのほうが下手を打ったが、今は人間のほうだ。
「それにしても不味い…脆弱な味だ」
ぼそりと呟くアーサーの足許にはふたりぶんの屍体が無造作に転がされている。
彼らは失敗したのだ。
ヴァンパイアの前で血を零すと言う失敗。
それは些細なことだけれど、血を糧に生きるアーサーには充分だった。
長い間眠らされていたせいだろう、アーサーは体がの動きが随分と鈍くなっていることを察する。
そろそろここから離れないと、この状態ではまた封じられてしまうだろう。
「血が足りねぇな…もう少しましな奴を探さねぇと…」
口の周りについた食事の後をぐいと拭って、アーサーは久し振りの外へと踏み出した。
――その瞬間。
月を見ていた菊は覚えのない血の匂いにびくりと体を震わせた。
それから、狂気染みた気配も。
(里のほうに行く気でしょうか…)
これは危険だ。
菊の中の本能が告げる。
近付くことはやめた方がいい。
けれど、このままでは里の人達が危なくなる。
「………行ってみましょう。交渉の余地は、あるはずです」
それは菊にとって足が竦む程のことだったし、頭のどこかで里の者など、と言う声もあった。
だけれども人は弱い。
ひょいひょいと枝々を蹴って、菊はそんな憎らしい程弱々しい人のために歩みを進める。
「…なんて傲慢な」
心まで鬼になっていないと言う証明が欲しいんでしょう。
ぽつりと呟いてから一際遠くに跳躍して、菊はアーサーの前に降り立った。
いきなり目の前に落ちて来た(ように見えた)菊にアーサーは思わず立ち止まって、少し遅れて被った着物の裾がたてた音に我に帰る。
折しも雲が満月を――そう、満月だった――隠し、ふたりの姿は暗く陰った。
それでもそこはひとでなしの鬼子に夜歩きの鬼、相手の姿は認められる。
菊は。
アーサーの月のいろの髪に驚いた。
それから翡翠の瞳に堂々とした雰囲気に気圧される。
アーサーは。
菊の夜を張り付けた髪に身構えた。
それでもバターのような肌に映えるさっぱりと暗い瞳のいろに見惚れる。
どちらも自国にはないいろの合わせだ。
「…誰だ、お前」
先に口火を切ったのはアーサーのほうだった。
「貴方こそ…そんなに狂気を振りまかないでください。怯えますから」
「怯える?誰がだ?」
言いながらアーサーが伸ばした手を菊がぱしりと掴んで、その冷たさに少し驚く。
「…あなた、一体」
「ヴァンパイア」
すう。と。
アーサーの手首が薄れ一瞬で菊との距離を詰める。
首筋をべろりと舐めて、
「…ひっ…」
「お前、人じゃないんだな」
「な…にを、」
「血が足りなくてな…分けてくれよ。人じゃないなら力も溜まる」
「ち、って、…ぁ、ああ…っ!?」
そうして。
鋭い牙がずぶずぶと菊の膚に突き刺さる。
痛みと言うよりは驚愕に目を見開いた菊がアーサーの腕にぎりぎりと爪をたてたが、アーサーは気にも止めない。
菊の血の甘さに酔って、歯止めがきかなかった。
「ぉ…願い、ですからっ…もう…っ!」
「………?ああ…うん…」
涙混じりの懇願に惚けながらも牙を引き抜けば、くぷりと傷口から血液があふれる。
(――あ、)
無駄に流れる。
こんなに、甘い血が。
アーサーは半ば無意識のまま傷口に舌を這わせた。
「ひぅっ」
「…傷口を塞いだだけだ」
アーサーの言ったとおりに、菊の首筋にあった傷はじゅわりと消えてゆく。
じくじくと薄れ――引きつったような痕が残るだけになった。
けれど、
(回復が早い…?)
あまりにも回復が早かった。
普通の人間ならヴァンパイアの力を使っても1時間はかかる。
アーサーは不思議に思いはしたがまぁ人ではないようだからな、という結論に落ち着いた。
「あなた…あなた、本当になんなんですか」
「言っただろ…ヴァンパイアだ、ってな」
にたりと笑ったアーサーの後ろで、やけに大きな月が光っていた。
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