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「ひじかた、さん」
思わず名前を呼んだ声は、沖田が考えていたよりも切羽詰まって響いて。
ああ、駄目だ。俺はこの人に溺れきっているらしい。なんて思いを湧せるのには充分だった。
「ひじかたさん」
「……っは…んだよ、」
ちろりと紅い舌が蠢いて白い歯が覗く。
くらくらするのは鮮烈なコントラストにか、この空気にか。
「ひじかたさん…」
「総悟?」
情事の真っ最中に突然動きを止めて名前を呼び始めた沖田に土方は少なからず戸惑ったが、ぼたりと落ちてきた水滴には驚かされた。
「おい、総悟」
「………ひじかたさん…」
「何があった?」
「なんでも、」
「馬鹿、じゃあなんで泣くんだ」
「なんでもありませんやぃ…」
「…クソガキ」
なんだっていうんだ。
ずるずると肩に沖田の顔を押し当てられた土方が呟く。
ぼろぼろと膚をつたう涙はどこか熱い。
沖田自身どうして泣くのか分からないのに土方の問いに答えられる訳がない。
そうしてまた、宥めるようにふれてくる熱いてのひらに涙が溢れるのだ。
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