・企画参加用パラレル喫茶店編
世界を繋ぐ意図の色さまの四万打企画に参加させていただいたものです^^
ベル嬢を出したんですが名前がアレだったのでベルフィリア=ワルトスタウツにしました。
ベラドンナとかでもいいかと思ったんだけどさすがにベラドンナじゃ悪役っぽいかなと思って。
リッヒたんでもよかったかな…リヒティアルハ=ツヴィンクリという名前を考えてあったのですが。愛称ティアで。
ルートはギルの弟設定、ついでとばかりにヘーデルヴァーリ弟・エリクトも出してみた。
あ、姉さんは藤吉ですがベル嬢は違いますよ。理解があるだけ。
後半楽器がチラッと出てきますが適当にあてただけです…かなり意味ないです…しかしギル似合わねぇ。
東欧ばっかりなのは、仕様です^^
ベル嬢は違うんだけど。
しかしあんまり本田受っぽくならなかったとはなんの冗談だ…orz
姉さんの藤吉が強調されただけな気が…します…
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そのカフェにはピアノがあって、行くと大抵誰かが弾いていた。
1日のうちに1時間だけぽっかりと客足が途絶える時間があって、エリザベータは大抵その時間にカフェを訪れている。
「絶対何かあるのよ」
「エリーゼ、あんた男がふたりいたらいつもそう言うじゃない」
「ベル、今回は本気なの!」
ばんと華奢な机の天板を乱暴に叩いてエリザベータが言う。
身を乗り出して主張する彼女にベルフィリアは溜め息をついた。
今回が初めてではないのだ。
エリザベータは大声を上げたことに慌てて、ピアノとカウンターに視線を巡らせてから少し声を潜める。
「だってキスしてたのよ?」
「挨拶でしょ」
「ベル、日本人は挨拶でキスしないの」
「日本人だったの?」
「ええ」
このお店の細かい気配りってオーナーさんが日本人だからかも、エリザベータは言って整えられた店内を見回す。
視界の端を金髪がかすめて、不愉快そうにベルフィリアに向き直った。
「…ここでギルベルト・バイルシュミットも働いてるのよね」
「も?ああ、エリックもいるのか。…フルネームで呼ぶほど嫌いなの?いいじゃん昔のことは」
「嫌。気に入らない」
鼻にしわを寄せて憮然とした表情を作りながらエリザベータは紅茶を含む。
注文していたケーキが届いたこともあって、古馴染への文句もいっしょに飲み込んだ。
「お待たせしましたー。ダブルベリーのムースとチョコレートチーズケーキでーす」
「うわぁ美味しそう!」
「ハイ、エリック。楽しそうだね」
「やっほーベル。楽しいよ、オーナーさん優しいし」
エリザベータが飲み込んだ文句はウェイターが運んできたケーキへの感嘆にすりかわる。
ベルフィリアはウェイター、エリザベータの弟であるエリクトに話しかけた。
出されたケーキにひと通りうっとりしてから、エリザベータは背を向けたエリクトの髪をがしりと掴む。
「っ!!」
「ねぇエリック」
「い、痛い!姉さん離して!首が!」
「今日はオーナーさん演奏しないの?」
「…エリーゼ、まずは離してあげなよ」
呆れたように言ったベルフィリアの言葉に素直にエリクトを解放し、目を輝かせてエリザベータは弟を見つめる。
姉の期待の籠った視線にたじたじと離れながら彼は答えた。
「えっと…オーナー?わかんない、けど…オーナーの演奏聞きたいの姉さん」
「ていうか、オーナーさんが見たいの」
「…オーナーのこと変な目で見ないでよ」
「その言葉そっくりそのまま返してあげるわ」
「こらそこの姉弟」
「「なに、ベル!」」
「件のオーナーさんが後ろにいるよ」
ぴしり、ベルフィリアが伸ばした指先をエリザベータとエリクトが追う。
その姿にベルフィリアは姉弟ってこんなに似るものかしらと面白く思った。
「「ふわぁ!」」
「…仲がよろしいんですね、エリクトくん」
「あ、姉ですっ!」
「存じ上げてますよ」
よくいらしてくださいますよねと言った菊にエリザベータが顔を輝かせる。
「覚えててくださったんですか!」
「ええ、来ると大抵楽しそうにこちらを見てますから。やっぱり弟さんは心配ですか?」
「えっ、と…」
「…姉さんここのピアノが好きなんですよ」
口籠ったエリザベータをエリクトがフォローするように言葉を挟む。
それにほっとしてエリザベータも口を開いた。
「そうなんです、それで、あのう…よろしかったら、ピアノを弾いていただけませんか?オーナーさん」
「私ですか?ローデリヒさんではなく?」
「はい、是非オーナーさんに。…ダメ、ですか?」
ちょっと首を傾げてエリザベータが言う。
彼女は自分がなにをすればどう相手に映るのか熟知していたし、それは充分に効果を発揮した。
「え、ええと、悪くはありませんよ、もちろん…そうですね、どうせですからなにかみんなで演奏しませんか」
「ホント!?じゃあ俺ファゴットとギルとフルート持ってきます!」
「エリックあなたここに置きっ放しにしてないでしょうね!」
「してないよ!」
「…ギルは物じゃないってことには突っ込まないんだ」
「みたいですね…」
楽しげに溜め息をついて菊がピアノを弾いていたローデリヒに歩み寄る。
気付いたローデリヒはテンポを落として無言で菊に尋ねた。
「久しぶりにあなたのチェロが聞きたいんですけれど」
「…貴方がピアノを?」
「はい。エリクトくんがファゴット、ギルベルトさんがフルートを」
「そして私のチェロ。…厨房からルートヴィッヒを呼んでいらっしゃい、ヴァイオリンが入りますから」
「わかりました」
ローデリヒと短く言葉を交わした菊がするりと厨房に姿を消す。
その光景を見ていたエリザベータが怪しげに笑ってつぶやいた。
「いいなぁ、あのピアニストさん…」
「…あんたの脳内ってピンクとパープルよね」
「うん…」
「ひとの話を聞け」
「うん…」
そうして始まったふたりの観客のための小さな演奏会、それをゆったりと堪能しながらエリザベータのこぼした言葉に、ベルフィリアは彼女を店から摘み出したくなった。
「次の新刊、ピアニストさんとオーナーさんかなぁ…いやいっそエリックとか…でもあのヴァイオリニストさんもなかなか…」
「………音楽聞けよ……」
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