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アジトにしている建物の、自分にあてがわれた一角へようやく辿り着く。
――ああ、漸く眠れる。
なんとなく疲れ切った体を支えつつドアを開け、
「あ、遅いですよ先輩」
閉めた。
いやいやいやいやいやいや。
なんだ今のは。
幻覚か?
誰かそうだと言ってくれ…頼むから。
ドアの前で頭を抱えるオレは、たぶん相当の怪しい人物だったろうがそれは良い。
此処の住人は滅多にこっちにはこない。
「ちょっと、なんで閉めちゃうんですか先輩」
「うわぁー現実だったー…」
「先輩、キャラ崩れてますよ」
「お前の所為だ」
「酷いですね」
くすくす、笑いながら言う。
如何して此処にいるんだ、こいつは。
「なんだか、眠れなくって。先輩が添い寝してくれたら眠れる気がするんですよね」
「…なんでオレなんだ。他にもいるだろう」
「嫌、ですよ。良いじゃないですか、昔はよくしてくれたんだし」
「あのな」
「それに。先輩で良いんじゃなくて、先輩が良いんです」
「…………はぁ」
強引な奴だ。
どうせオレが断ってもそんな事はお構いなしにはいって来る気だろう。
「仕様がない奴だな」
「クフフ。有り難う御座います、先輩」
にっこりと笑う。
そんな動作ばかり昔と同じでなくても良い。
オレは甘いんだ、こいつの此の笑顔に。
くるりと身を翻して室内に入っていった少年に、まだまだ甘いと思いつつオレも続いた。
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